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「わぶ」 『あ、起きた』  顔面に何かが落ちてきて目が覚めた。ばふっとしたやわらかいそれは俺の枕で、頭上にはさっきのおばけがいてまた気絶しそうになった。なんとか起き上がって枕を両手で抱えてズザザザーッと部屋の隅っこまで逃げる。おばけが動いたらすぐになんか、逃げられるようにじっと睨んだ。霊感なんかないと思ってたのにまさか見えるとは。見えなきゃいないのと同じだって思ってたのに。見えちゃったらいることになっちゃうじゃんか。 「あ、あああ、悪霊退散、」 『ひどいな』  おばけは別に傷ついてるわけでもなさそうにそう言って膝を抱えて浮きながら宙をぐるぐる回った。 「い、いつから」 『きみが入ってくるずっと前から』 「うえ」 『俺が今日ミスしたからたまたま見つかっただけで』  いつもの時間に帰ってこないから、やっと彼女ができたかと思ってたのに。     
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