魔王と邪神に愛されています

魔王編１

久禮汐音(くれいしおん)は、部屋の中で呆然と立ち尽くしていた。
「せっかく、好きってわかったのに……こんなのって、ないよ」
ソファに座る人物に向かって呟いたが、返事はない。そんなのは当然だ。
死んでいたからだ。
幼馴染で、つい最近好意に気づいたばかりの清梓真(せいあずま)が倒れている。
全身を貫いているのは、見たことのない黒光りした剣だ。こんなの悪い夢だ、と現実逃避したくなるような酷い死に様だった。
床にまで広がっている血溜まりは、ゾッとするほど赤い。どこかで見たことがあるような、色をしていた。