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「ねぇ、俺にどうやって話すつもりだったの。いきなり、友達辞めようとか言うつもりだったのかな」
「それは……」
「絶対激怒してたと思うよ。ほんと、兄貴はお節介だし汐音はお人好しだから。人の神経逆撫でするようなこと、平気でするなんて」
「ごめん、梓真」
責められてようやく、幼馴染に対して酷いことをしようとしていたと反省する。まだなにも伝えていなかったけど、それでよかったのだ。
梓真が異性に対して一切興味ないのは、よく知っていた。本人から紹介されるならまだ身を引いたかもしれないが、他人がとやかく言うことではない。
「悪いって思うなら、ひとつだけ俺の言うこと聞いてくれるかな」
「え?」
「罰ゲームぐらい、してもいいよね。ほんとは俺、すごく傷ついたのに許してあげようなんて寛大だよなあ」
「わ……かった」
汐音は理不尽だと文句をつけれるような立場じゃない。どんな性質の悪い罰ゲームかと怖々したが、首を縦に振った。
「じゃあ目閉じて」
「えっと、これでいい?」
なにをするのかまったく見当がつかなかったが、言われた通りにする。ぎゅっと強く瞳を閉じると、笑いを噛み殺したような吐息が耳にかかった。
そういえば、随分近くで話をしていたことを今になって不思議に感じる。そのまま待っていたら、唇に柔らかいものがいきなりふれてきた。
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