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「うわっ!? 今の、なっ、なんだ?」
「なんだろうね」
「指を口の中に突っ込もうとした……とか」
「なにそれ。いくら俺がいじめっ子でも、そこまで酷いことしないけど」
「俺の嫌いな物、無理矢理食べさせて笑ってたじゃないか。先週だって」
「あー……そうだったかな?」
目を開ける前に反射的に飛び退いてしまったので、なにをされていたのか想像もつかない。過去の経験を頭の中で反芻し、思いついたのが最近やられた嫌がらせだ。
バツが悪そうにしている梓真は、普段と変わらず飄々としていてそれ以上はなにも告げなかった。茶化すようなことも、文句もつけないので、大方汐音の予測は当たっていたのだろう。
ほんとうの答えを教えられないまま、汐音は雰囲気に流されてしまった。罰ゲームはそれ以上なかったけど、酔った梓真に無理矢理ビール以外の酒を飲まされてしまい途中で眠ってしまった。
これまでとなにも変わらない日常。でもその日、夜中に目を覚ました汐音は見てはいけないものを目撃してしまう。
「ん?」
不意に気配を覚えて、暗闇の中うっすらと瞳を開くと梓真がひっそりと立っていた。眠かったのですぐに汐音は目を閉じてうとうとしていると、ソファの隣に腰掛けるのがわかる。
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