魔王編1

15/50
1820人が本棚に入れています
本棚に追加
/288ページ
寂しかった。周りから、べったりしすぎていると言われるぐらい傍にいたけど、ひとりになってしまえば梓真のことばかり考えてはぐるぐる悩んでしまう。 当たり前だ。汐音は寝ていたとはいえ、遊びでキスをされてしまった。ただ悲しいだけで、その行為が気持ち悪いとか、激怒するほど恨んでいるわけじゃない。どうしてなのか。 一週間、梓真とは話をせず真剣に自身の感情を整理することだけに専念した。そして自覚してしまったのだ。 「好き、だったなんて……」 真夜中に梓真が真剣な顔で、眠っている汐音にしてきたことの理由を考えていくうちに、自分はどうなのかと何度も問いかけてみた。 キスをされて嫌だったのか。友人を辞めたいほど憤慨したか。 そんな感情は一切なかった。ただ、異性ともしたことのない行為に動揺し照れたことは事実だ。 唇がカサカサになるほどふれられた部分を指で擦って、思い悩むうちになんだか段々と汐音は情けなくなってしまった。 梓真からの口づけが嬉しくてたまらないなんて。 汐音は自身が同性愛者であることに気づいて泣きたくなった。よりにもよってはじめて好きになった相手が、唯一の友人であるという過酷な事実も受け止めなければならない。 想いに気づいてしまったら、今度は怖くて仕方なくなってしまう。     
/288ページ

最初のコメントを投稿しよう!