邪神編3

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ぐっと唇を噛み締める。すべてを諦めたような汰央の顔に、苛立ちを覚えたからだ。 「遅いって、どうして今まで黙ってたんだよ。もっとはやく、ほんとうのことを教えてくれたら……っ」 「なにも変わらないだろう。汐音は優しいから、これまで一緒だった梓真のことも憎めない」 「ッ!?」 汰央は完璧に汐音の心を読んでいた。いや、汐音以上にわかっていたのだ。 昔の梓真がしたことは許されることではないけれど、長いこと傍にいてくれたことだけは本物だった。汐音と本気で友人関係を築き、楽しませてくれた事実は消えない。 「……そんなこと、ない。俺の友達がもうひとりいたこと、もっとはやく知りたかった」 「悪いな、汐音。俺は友達にはなれないと思ったから、言わなかった」 「えっ、汰央と友達には戻れないの?」 「そうだ。俺はお前が好きだから、友達ではいられない」 「す、き……」 友達には戻れないと言われてショックを受けていたが、理由は単純だった。そうだったのだ。 汰央は、汐音のことをずっと愛していると言い続けてきた。 恋をして好きになれば友人でいられないことは、汐音もよく知っている。好意があるのに今まで通りのつきあいをしろなんて、拷問に近いことだ。     
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