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これまで汰央がしてきたことを思うとすぐには返事ができず、ただ鼓動だけがはやくなっていく。これ以上考えてはいけないと、頭の中で警報が鳴っているが無視をした。
「いつから、好き……だったの?」
「汐音に会う前からだ」
「会う前って、前世のこと?」
「あぁ、噂を聞いたんだ。隣の村から、災いをもたらす魔物がやってくると。一度ぐらい魔物を見てみたいと思っていたから興味本位で近づいた。人を魅了するほど美しい魔物も存在すると、聞いたことがあったから少し期待していた。多分その時から、俺は……」
申し訳なさそうに苦笑しながら、汰央は話してくれた。汐音のよくない噂を聞いて、会ってみたいと思っていたことを。
下心があったとはいえ汰央はすぐに、友人になって欲しいと声を掛けてくれた。その時の喜びは、今でも鮮明に思い出せる。
「じゃあ、梓真の力で魔王にさせられてからはどうしていたの」
「ひとりだった。それ以上のことは、話す必要はない」
「……っ、でも、俺のせいで!」
「汐音のせいではない。俺は、あの時のことを恨んではいないし、よかったとさえ思っている。だから責任を感じることはない」
ぴしゃりと言い切られてしまうと、それ以上問い詰めることはできなかった。悔しい。
汰央が魔王にされたことは、汐音のせいであることに間違いないのだ。一緒に行動していなければ、巻き込むこともなかっただろう。
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