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「無理矢理抱かれても、嫌じゃなかったかもしれないよ」
「汐音?」
「今思うと、汰央は行為の時もすごく優しくしてくれた。梓真のほうが、俺をいじめて楽しんでいたと思う。頭の片隅で、ずっと汰央のことが忘れられなかったんだ」
はじめて会った時から、ずっと引っ掛かっていたのだ。汰央の存在は、梓真とはまったく違う意味で、懐かしいような不思議な気持ちにさせてくれた。
それは正しかった。汰央には魅かれるだけのきちんとした理由があったのだ。
「俺のこと諦めないで」
「まさか、お前」
「これ以上梓真に振り回されるのは、嫌だ」
まだ記憶が戻ったばかりで混乱しているので、はっきりと汰央が好きだとは伝えられなかった。でも、好意はあると思っている。
梓真は優しくて、友人だから好きになった。だけど元はといえば汰央がはじめての友人なので、梓真への気持ちは汰央への気持ちでもあるだろう。
「それは俺に助けを求めているということか」
「できれば、梓真と話し合いたい。ふたりきりでは無理だから、協力して欲しい。行かないで」
「……わかった。汐音がそこまで言うなら手伝おう」
ほっとして全身から力を抜く。汰央は汐音から離れるようなことを言っていたので、それでは困ると思ったのだ。
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