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扉を叩く音に返事をしながら出ると、幼い頃からの親友であり人間界を救う神の子に選ばれたアズマがにこやかな表情で笑っていた。
「ねぇ、大事な話があるんだけど今いい?」
「こんな時間に? 明日もはやいのになに暢気なこと言ってんだよ」
盛大に呆れながら、きっと思いつきで部屋にやって来たのだろうなとシオンは見抜く。幾度となくアズマに振り回されて散々な出来事を体験していたのでいつものことだった。
だけど今夜ばかりはそうはいかない。厳しい口調で言い放つ。
「魔王の城は目の前で、決戦に備えてピリピリしているのにわがままにつきあっていられない」
「心外だな。わがままなんて、俺がいつ言った?」
「……っ、とにかくダメだから。どうしても話があるなら、全部終わってからにしてよ」
唯一魔王に対抗できる聖なる剣を操れるアズマは神に選ばれた者として広く知れ渡っていたが、協調性がないことが欠点だった。強力な魔導士として冒険のはじめから共に歩んできたシオンは、他の仲間達とアズマが揉めるのをいつも宥める役だ。
力はあるが変わり者。なんであんな奴が、と文句が度々でてきたが必死になって今日までやってきた。
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