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そういうことか、と納得した。長年魔王を倒すことができずにいた人間達は、撃ち滅ぼすことを諦めて存在ごと封印することを選択したのだ。
根本的な解決にはならないかもしれないが、魔王が一時でも消えることで得られるものは大きい。宝玉の力を使えば封印が可能だというのなら、シオンもその方法に賭けたいと思った。
『一つ問題はあるが……』
『やります。俺にできるのなら魔王を封印したいです!』
『最後まで話を聞け。宝玉は強力だ。もしかしたら術者の命をも奪うかもしれない』
『えっ……俺の命を?』
シオンが驚きで言葉を失っていると、魔導士は渋い表情で視線を落とす。その僅かな動きで、恩師の複雑な心情が痛いほど伝わってきた。
知っていたのだ。国で最も優秀な魔法使いを犠牲にしなければいけないことを。
教え子が魔王を封印することで命を落とすかもしれないと理解しながら、そのことを隠し育てる苦悩。強い魔法使いを育てなければ、もっと多くの命が失われてしまうプレッシャー。
一切の妥協を許さず豊富な魔法知識を与えてくれた恩師に対して、感謝しかない。明るい声でシオンは応える。
『構いません。俺の命で魔王が封印されて平和が訪れるなら、こんなに嬉しいことはないです』
『だが』
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