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『ほんとうは、魔王を倒しに行くなんてずっと嫌だったんです。アズマが……大切な友人が危険に晒されるなんて、そんなの耐えられなかった』
あまりにも身勝手な思いだとわかっていたが、これまでシオンが優秀な魔導士になる為に努力をしてきたのは、アズマを守りたかったからだ。
ある日突然村に予言者がやって来て、アズマに対して世界を救う神の子だと宣言した。穏やかだった日常は劇的に変化してしまい、友人を失うかもしれない悲しみで涙が止まらなかった。
アズマが村を離れて魔王を倒すのに相応しい神の子になる訓練をすると聞き、勇気をふりしぼってついて行きたいとシオンは志願したのだ。幸い魔法力が人並みよりも高かったようで、希望はあっさりと受け入れられた。
それから死にもの狂いで勉強した。国を救うとか、魔物のいない平和な世界のことなんて、考えたりもしなかった。
いつかアズマを守れるように、という願いだけでシオンは生きてきたのだ。
しかし、シオンの力だけでアズマを魔王から守れるのか。目の前で殺されてしまう日が来てしまうのではないか、という恐怖にずっと苦しんできた。
『こんな大切な役目を与えてくれて、ありがとうございます』
重く肩に圧し掛かっていた気持ちが消え、晴れやかだった。これからは、魔王を封印することだけに集中すればいい。
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