魔王編1

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シオンが犠牲になることでアズマは悲しむかもしれないが、アズマが犠牲になりシオンが悲しむよりは数倍マシだった。 神の子として選ばれたアズマは強く、その実力は本物だ。聖剣に宿った光の力で魔王を引きつけてもらっている間に、封印の術を完成させれば失敗はしないだろう。 『あの、このことは誰にも言わないで下さいね』 『もちろんだ。どこから作戦が漏れるかわからないからな』 別れる間際も、恩師の表情は硬かった。絶対無事に帰って来ます、と言えればよかったがシオンにはそんなつもりはなかったので申し訳なく思っている。 過去を振り返りなら深呼吸をしていたので、少し気分が落ち着いてきた。託された作戦を決行するのは明日。 「ずっとこの日を待っていた」 アズマと魔王を倒す旅をはじめてから、未練を残さないようにといろんなことをしてきた。強引なわがままにつきあうのもその一つで、いつも甘すぎると他の者達からは睨まれたことが今では懐かしい。 楽しかった。予定よりも城に着くのがはやかったのが少々残念ではあったけど、アズマの傍にいられて幸せだった。 幼い頃に、時間も忘れて暗くなるまで遊んだ日々を思い出させてくれた。あの頃のままでいられたらよかったけれど、考えても仕方のないことだった。     
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