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『じいちゃんが倒れたみたいで、詳しいことはわかんないけど帰ってこいって言われてさ。これから兄貴と合流するところ。後でまた状況は教えるよ。とにかく急いでるから』
「うんわかった。気をつけて』
梓真の声が聞こえてきただけで胸に込みあげてくるものがあったが、内容が緊迫していたのでなんとか堪えて頷いた。親族の容体が悪くなったのなら、約束どころの話ではない。
一分もしないうちに通話を終えて、ほっと息をつく。スマートフォンをぎゅっと強く握り締める。
びっくりしてしまった。汐音は過去に遡ったというのに、知らない出来事がいくつか起こっている。
それはつまり、未来が変わったということだろう。
以前は約束の日に梓真から電話の一本もなかった。しかしやり直した今は、すぐにでも自宅を出る様子だったので、これから不可思議な殺され方をすることはほぼないだろう。
一番怪しい容疑者と思われる魔王は、汐音の傍に居る。梓真を救えたことで気持ちが昂ぶっていると、視線が合った。
「どうした。なにか嬉しそうだが」
「な、なんでもないです。それより、ほんとうは今日友人と約束があったんですけど、相手が急用で会えなくなってしまって……」
「それはタイミングがいいな。俺は運がいいようだ」
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