魔王編1

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汐音の声掛けに安堵の表情を浮かべながら、地図のようなものを見せてきた。やっぱりそうだったと、にこやかに微笑み目的地を聞き出す。 どうやら神社を探していたようで、なるべくわかりやすく説明する。女性は別れ際に何度も汐音にお礼を言うと、足早に歩いて去って行った。 後姿を見送りながは、ひとりで満足していた。背後から、声を掛けられるまで。 「ほんとうにお前は、年寄りに親切だな」 「どうしても見過ごせなくて。すみません」 呆れた勝則が再び歩きだしたので、慌てて後ろをついて行く。謝りながらも、汐音は口元に喜びの笑みを浮かべていた。 子供の頃から祖父母が汐音の面倒を見てくれていたので、同年代の友達よりも十歳以上離れた大人と話す機会のほうが多かった。どうやら汐音は一定以上の年齢の方々から異様に好かれやすいタイプのようで、よく話の聞き役になっていたのだ。 自身が話すより、聞いているほうが楽しいのもあった。それだけではなく、年を取った人達が話し掛けやすい雰囲気というものが汐音には備わっていたらしい。 背は一般の成人男性よりも低く、スーツを着ていても就職活動をしている学生に間違えられるぐらい若々しい。私服は地味なものが好きで特にパーカーを好んでいるので、同級生に久しぶりに会うと年齢不詳だと騒がれる。     
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