魔王編1

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立っているだけで、道を聞かれることは度々だった。就職して現在の職場で働くようになってから、ますます機会は増えた。 近くに有名な神社があり、非常にわかりにくい場所に存在していたので、毎回同じことを聞かれていた。そのうち、汐音から迷っている人に対して積極的に声を掛けるようになってしまった。 見えているのに無視することなんてできない。たまに若い子が迷っていたこともあったが、同年代の子はなぜかどうしても苦手で話し掛けられなかった。 若者は行動力があるので別に汐音が教えなくても、他の通行人に聞けばいい。困っているお年寄り限定で人助けをするのが、当たり前になっていた。 「梓真が気に入っているのも、そういうとこなんだろうな。あんなひねくれ者にはもったいない友達だ」 「いや、俺こそ……梓真と友達になれて良かったです」 本心からの言葉だった。たまたま近所に住んでいたというだけなのに、汐音のことをやたらと気に入ってくれたようで梓真はずっと傍にいてくれたのだ。 友人といえど成長すれば疎遠になるのが普通なのに、これまでと変わらず時間を作っては会ってくれた。けれどそろそろ、梓真から離れてそれぞれの道に進む時がきたのだ。     
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