魔王編1

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駅のホームで別れると、さっそく梓真の自宅へ向かう。週末に泊まるのが習慣になっていたので、特に連絡せずにマンションの前にやって来る。 「汐音!」 「あれ? 今帰り」 「そう。ちょうどいいタイミングだった」 ポケットを探り合鍵を出そうとしたが、エントランスで梓真に遭遇したので手を引っ込める。仕事帰りなのか、白いジャケットとズボンに黒のタートルネックといういでたちだ。 肩まで伸びた灰色の髪をなびかせ、颯爽と歩いてくる。扉が開くタイミングで一緒にエレベーターに乗り込んだ。 汐音も今日はたまたま遅かったが、どうやら梓真も普段より帰りが遅かったらしい。そう思っていたら、ボソリと告げられる。 「なーんてね」 「え?」 「待ってたんだ。汐音が来るのを。ちょっと驚かせたくて」 悪戯が成功した子供のように、ぺろりと舌を出す。汐音にとってはいつものことだったのでさほど驚かなかったが、呆れていた。 昔から変わっていない。むしろ、大人になってから悪化している。 黙っていればモデルみたいに美形で身長も高くモテるタイプなのに、言動や態度は猫よりも気まぐれで考えが読めない。肩まで伸びた髪を払う仕草は妖艶で、一緒にいるとよく知らない人にジロジロ見られてしまい注目を浴びる。     
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