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梓真は、周りの声なんて聞こえていないみたいでマイペースだ。本人のいないところで、よくあの梓真と友人なんかやっているね、となぜか労わられたことがある。
実際大変なのだが、汐音は梓真に助けられることも多い。だから、かけがえのない大切な存在だと思っている。
「家で待っていればよかったのに」
「だって、来るの遅いから」
「そうか、連絡ぐらいすればよかった。ごめん」
ほとんど残業のない職場なので、毎週同じような時間に訪れていたのだが、今日に限って来ないことに不安を感じたのかもしれない。汐音が少しだけ申し訳ない気持ちでいると、部屋の扉が開いた。
「じゃあ、今日は一本つきあってよ。いいよね?」
「うん、わかった」
コンビニに寄っていたのか、袋を掲げてきたので覗くと缶ビールが入っていた。普段あまり汐音は飲まないけれど、梓真に言われたら断れない。
それに、ちょうど話もしたかったのでほろ酔いぐらいがちょうどいいかもしれないと思った。つまみを用意しさっそく乾杯すると、他愛のない話題ばかりを一時間ぐらい続ける。
どう言おうかと窺っていたのだ。しかし、いい方法が思い浮かばず内心悩んでいると、ソファの隣になぜか梓真が座った。
「どうしたの。なんか、ソワソワしているけど」
「そう……かな?」
「汐音のことなら、俺はなんでもわかるからね。あのさ、隠し事をしているだろう」
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