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軍服の襟元を飾るジャボを取り、ぱさりと近くに置いたディオンを瞳に映して、セレーネは隠しきれない恐怖に冷や汗を流す。
「これから毎日可愛がってあげますから、服なんていらないですね……? これもすべて、あなたのためですよ、セレーネさま」
だからこの行為は正しいのだと正当化するディオンを、持てる限りの力を振り絞り睨みつけたセレーネは、無情にもドレスを引き裂かれ、思わず悲鳴を上げてしまった。
「きゃああ……! い、嫌です、見ないでください!」
体裁とか気にしなければならない立場だということは、わかっている。
でも、恐怖に屈し頭が真っ白になって、見苦しい姿を晒してしまった。
「わ、私……」
自分の悲鳴に我に返り、セレーネは落ち着かないとと頬を噛んだ。
そして、涙を瞳にいっぱいためながら、努めていつもの声音で言葉を紡ぐ。
「このようなことをして、許されると思っているんですか? 今ならまだ間に合います、このことは私の胸に秘めますので、どうか帰してください、ディオンさま」
「帰さないと最初に申し上げたはずですよ、セレーネさま。あなたは一生、ここで過ごすのですから。それに、そうすれば、あなたを利用しようとする者たちからも守れますし」
利用する者たちとは、いったいなんなのだろうか。
引き千切られたドレスをかき集めたいのに手を縛られているせいで叶わず、コルセットとシュミーズが露わになり、セレーネは涙をこぼさないよう瞬きを堪えた。
「い……っ、嫌、やめて……これ以上は、もう」
「やめませんよ、セレーネさま」
レースで装飾された可愛らしいコルセットに掛かった手に怯える姿は、ディオンの理性を犯すだけだと、セレーネはわかっていない。
躊躇せずにコルセットの紐をほどかれ、そのたっぷりとした胸を解放されて、セレーネは絶望に喉を上下させた。
「や、やあっ。テオドールさま、テオドールさま……! んう……ッ」
もう、駄目だ。
これ以上はどんなに頑張ったって、気丈に振る舞い続けることなんて、できやしない。
――助けて。
切な叫びは強引に重なった唇によって塞がれ、セレーネは押さえつけられている手に力を込める。
じたばたするのはみっともないと分かってはいるが、この際、この身を守れるのであれば構わなかった。
「んん……っ」
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