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ふわりと、そう掛けられた瞬間に胸に服が当たってしまい、つい声が上がってしまう。
慌てて口許を抑えるが、遅かったようだ。
胸の頂きが赤く色ついていることに気がついたテオドールの視線が、そこに集中されていることがとても恥ずかしくて、セレーネはできる限り腕で隠して縮こまる。
「……っ」
テオドールの舌打ちが、鼓膜を刺した。怯えから身体を跳ねさせたセレーネは、頭上から降り注がれる彼の視線を受け止める。
バタバタバタと足音が聞こえてきた。きっとこの足音の主たちは、テオドールが連れてきた者たちなのだろう。
ギロリとディオンを睨みつけたテオドールにふわりと持ち上げられて、セレーネは状況が呑み込めずきょとんとした。
「……お前は父親とは違い優秀であったから、目をかけていたというのに」
何故裏切った。そう言っているような気がしてならず、セレーネはテオドールの頬に手を伸ばし、切なさに胸を震わせる。
「セレーネさまを、愛してしまったからです。……幸せそうにセレーネさまが笑っていたら、幸せそうにあなたの隣にいたら……そうしたら私はこんなこと、しなかったですよ」
「…………」
「悲しみから、そして危険から、セレーネさまをお守りしたかった。……おかしいですよね。一言も話していないというのに、こんなにも……私は、セレーネさまのことを」
「ディオン」
「あなたが悪いんですよ、テオドール・ラリス・クラウディウス。セレーネさまを隣に置く資格など、氷の皇帝にはない!」
叫び、げほげほっと咳をした彼を見るテオドールの目が複雑そうで、なんと声をかけたらいいのか分からなかった。
そしてついにもどかしい疼きが限界を迎え、セレーネは苦しそうな吐息をあげて、潤む瞳をテオドールに向ける。
――苦、しい。ああ、疼いて堪らないわ。
そっとベッドに寝かされたかと思えば天蓋から下りる幕をきっちりと閉められ、隠された。
そんな時だ。この部屋に複数の人が入ってきたことがわかり、セレーネは歯を食い縛る。
「……そいつを連れていけ」
「はっ、仰せのままに。……皇帝陛下、皇后陛下はどちらに?」
「私の後ろに居る。囚われ憔悴しきっているから、私があとで運ぶ。だから、お前たちは先に下りていてくれ。それと、この部屋には誰も近づけるな」
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