第4章 信じるものは

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「では、私も幸せになってはいけません」 「なに……? あなたは幸せになっていいんだ、セレーネ」 「いいえ。だって、私の幸せはテオドールさまが幸せになることですから、テオドールさまが幸せにならないのであれば、私も幸せにはなりませんわ。だから、テオドールさまが幸せになってはいけないと仰るなら、私も幸せになってはいけません」  テオドールが微かに息を呑んだような気がする。  だからなんとなくすぐそこにあるテオドールの頬にちゅっとキスをしたセレーネは、喫驚してこちらを見てきた彼に、駄目押しの笑みを湛えた。 「ねえ、テオドールさま。人は誰しも、幸せになる権利をもっているんです。そうでしょう……?」  だからどうか、そんな悲しいことは言わないで。  ぐっと歯を食い縛ったテオドールの腰の動きが再開して、セレーネは堪らず甘い吐息を漏らした。 「アア……ッ」  毒のように広がる熱は、とてもよいものだ。返事はしてくれないけれど、きっと、気持ちは伝わっただろう。 「テオドール、さま……っ」 「セレーネ、セレーネ。私が求めるのは、あなただけだ」  好きだや愛しているとは言ってくれない。でも、今の言葉だけで充分で、セレーネは熱い楔に与えられる気持ちよさに、ただひたすらに身を任せ、侵され続ける。  大きく引き抜き動く彼の激しい律動に下肢がぶるぶると震え、喘がされっぱなしで、喉が潰れてしまいそうだ。  だがそれすらも涙が出るくらいに幸せで堪らない。打ちつけられると自分のものなのか、テオドールの楔からなのか分からない音がぐちゅぐちゅと響いて、背徳に溺れてしまう。 「ひゃう……! あっ、もう、また私……っ」 「今度は私もだ、セレーネ」  上半身を屈め耳元でわざとらしく呟くテオドールの蠱惑的な声に、ぶるると背筋を震わせたセレーネは、ねっとりと絡みつく卑猥な言葉に、心臓を跳ね上げた。 「あなたのナカに、私の白濁とした欲望を放ちたい」
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