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自分はここにきて正解だった。たとえこの身が凌辱されようとも、みなを守ることができたのだから、それは誇るべきだろう。
心配そうに呼ばれ緩く微笑んだセレーネは、帰りたいという気持ちを呑み込み、軽く自分の頬を両手で叩いた。
「な、なにをなさって……!」
「ごめんなさい、エレナ。そして、ありがとう。あなたが来てくれてよかったわ。……誰も知らない、何も分からないこの国でただひとり生きていくのはとても怖くて寂しかったから、本当にありがとう」
落ち込んでいてはいけない。
自分のために祖国を捨て仕えてくれるエレナに、これ以上迷惑はかけまいと気合いを入れたセレーネは、まとっていた布団を優雅な動きで剥く。そして、ベッドの端へと腰を下ろした。
「……っ!」
「エレナ? どうかしましたか?」
自分の下着姿にぐっと下唇を噛み、今にも泣き出してしまいそうな顔をするエレナに、セレーネは瞬きを繰り返す。
「姫さま、そのお姿は……」
訊ね、しかしすぐに押し黙るエレナ。
幼少の頃から姉妹のように育ったとはいえ、自分とは比べ物にならないほど高貴な身分のセレーネに、これ以上踏み込んではいけない内容だと判断したのだ。
何事もなかったかのように着替えを用意するエレナに、セレーネはハッとした。
「あのエレナ、あなたなにか勘違いを」
「いいえ、姫さま。それ以上はなにもおっしゃらなくて結構です」
説明したいのに手早くコルセットをつけられ、セレーネはあっという間に着替えさせられた。
これは、テオドールが誂えたドレスなのだろうか。
レースで作られた薔薇が何個も縫い付けられている襟元に、大小様々なホワイトパールが散りばめられた豪華なドレス。
裾にはふんだんにフリルがあしらわれておりとても可愛らしいデザインで、華奢で可憐なセレーネによく似合っている。
「湯浴みをなさりたいと思いますし、今どこにあるのか確認して参りますので、姫さまはこのままお待ちください」
「あ……っ、ま、待って、エレナ」
「いかがなさいましたか?」
「テオドールさまが先ほど、湯浴みに時間がかかるからゆっくり会話していていいとおっしゃってたわ。なので恐らく、私が使える浴場は今、テオドールさまがお使いになってるのではないかしら」
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