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キラキラと輝く強い陽射しが照りつける蒼天のもと。
美しく整えられた薔薇園を抜けた先にある、広大で幻想的な泉水の上に建てられた、十字に置かれている五つの四阿のその中心。
天の園にあるかのように繊細で幻想的なデザインのその四阿で、天使のように美しい少年と少女が楽しげに会話をしていた。
ここから見える花々は生き生きとしており、泉水に浮かぶその花たちが羽根とハートの形になるよう庭師の手によって植えられていて、とてもかわいらしい。
「テオドールさま、見て、とても綺麗な小鳥さんたちがいるわ」
光を浴びるたびに、宝石のようにきらめく少女のエメラルドの瞳が、感激によってさらにキラリと輝く。
興奮気味に言う少女は少年の隣に座っており、ふりふりのドレスを大きく揺らして、目尻を下げた。
年は六つくらいだろうか。丸みを帯びた輪郭は幼く、可憐な少女は白い頬を赤く染め、テオドールと呼んだ中性的な顔立ちの少年の腕を引っ張る。
「そうだね、綺麗だね。セレーネは、どの子が好き?」
「私はあの青い小鳥さんが好き。だって、テオドールさまの瞳の色にそっくりなんだもの」
無邪気に笑う少女の、月粉をまとったかのような艶やかな金糸の髪がそよぎ、少年はあまりの眩しさに目を細めたように思われる。
すっと、伸ばされる手。
頭の上に重みと温もりを感じ頬を綻ばせた少女は、あなたはどうなのといった表情を少年に向けた。
「私は、あの緑の小鳥が好きかな。理由はあなたと同じで、あの小鳥がセレーネの瞳の色にそっくりだからだよ」
「本当に?」
「本当だよ、私は嘘はつかない」
笑い合い、風によって舞う薔薇の花弁に目を輝かせる少女たちは、互いの手を握り瞼を下ろす。
さわさわと揺れる木々の音色に、鼻を掠める薔薇たちの甘い香り。
夏らしい大気は黙っているだけで肌に汗の珠を浮かばせ、二人は「暑いね」とおかしそうに肩を竦た。
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