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ひと通り店内を巡り僕らが選んだのは、手の平に乗る大きさの四角い透明な硝子のオルゴールで、雪の結晶が彫刻されているものだった。
繊細に浮かび上がる純白の結晶は、冬に出会った僕らにとって意味のあるものに感じたし、組み合わされた曲も当時僕らが好きだった雪の歌だ。
君は一目で気に入ったようで、奏でられる切ないメロディに合わせ小声で歌詞を口ずさんでいた。
硝子のオルゴールが入った手提げ袋を大事そうに抱える君と店を出る。
ほうと吐き出す白い息は、冷えて澄んだ冬の晴天へと消えていった。
「コーヒーでも飲んで温まろうか」
「賛成」
大袈裟に喜んで僕の腕に飛びつく君の笑顔は、何十年経っても色褪せることはない。
小さな喫茶店の座り心地の良いソファ席で、しばし暖をとる。
向かいに座った君は、お決まりのように角砂糖を二つ落としたコーヒーカップに両手を添え、一口飲んでは指先を温めていた。
「話したことがあったかな。僕は学生時代、オルゴールを作る職人になりたかったんだ」
「本当?初耳だわ」
「憧れというのかな。この街にいると目にする機会も多いしね。どうしてあんな風に心に染みるような音がでるのかと、興味が湧いたんだ」
「それで?」
店内のレコードから流れる優雅なクラシックとは正反対に、爛々と瞳を輝かせテーブルに身を乗り出す君。
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