最後の音色

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君は大きく頷くと、袋から僕らのオルゴールが入った白い化粧箱を取り出した。 「私、ずっと思っていたことがあるの」 「なんだい?」 君は蓋を少しだけ開き、中のオルゴールに柔らかに微笑みかける。 「オルゴールって、まるで人の一生のよう。ぜんまいを回して生まれる曲は、喜びに満ちていたり、切なくて悲しいものもある。でも、どれもが煌めいていて一生懸命に音を奏でている。同じメロディが繰り返されても聴くたびに心打たれるの。私たちが繰り返す毎日が違っていくように」 「うん」 「やがてゆっくり、ゆっくり終わりが近づくの。誰かの心に最後の音を響かせながら」 僕は君が伝えたこの言葉を、決して忘れることはない。
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