クライマックス!さてっ、結末は?

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 自殺を考えていて、一人じゃ怖かったからだよ。 そう、今もその気持は変わらないんだね。俺は真剣な目つきで言った。 あっ、それは……。キクチは静かに俯いた。やはり時間が、彼を変えてしまったのだ。俺はマジなんだ。だから、あそこにも電話番号を書いた。今日会えたのも運命だと感じてる。俺は視線を感じていた。客はいなかった。思い当たるのは、カウンターに並んで座る老夫婦。それもそうだろう。さっきから自殺の話をしているのだ。気にしない方が、どうかしてはいないか。やっぱ、自殺はいけないと思う。キクチのその言葉に、老夫婦が同時に頷いた。気持が変わったんだ。 ……そうだよ。これで結論が出た、と判断した俺は、コーヒー代を置き、店を出た。  公園に戻っていた。トイレの文字をもう一度確かめるためだ。生きていても仕方がない、という気持は、あの日から変わってはいない。あんなに騒がしかった公園も、日没前には誰も居なくなっていた。長い影が、公園内に伸びていた。徐々に薄くなっていく人影は、寿命にも似ていた。トイレのドアを開けた。中には明かりが灯っていた。落書きがあった場所を探した。綺麗に消えるモノだ、と感心していた。本当はこの世から、俺が消えたい。ドアを開けると、そこにはキクチが立っていた。やっぱ、ここだったか?ずっと探していたんだ。 君はもう関係ない。 自殺はいけないよ、俺は気づいたんだ。 今更、何言ってんだよ。俺は同志が出来て、嬉しかったんだ。 頼むよ、聴いてくれ。とキクチはその場で土下座した。そんな猿芝居には、騙されない。俺はそう言い、公園を走り去った。 自殺する気持に変化はなかった。自宅アパートで、鏡を見つめていた。伸びきった無精髭。頬もすでにこけていた。透明瓶に入った白い農薬。コンビニで買った天然水のペットボトル。これを呑めばあの世に行ける……。自身でもここまで意志が強いとは思わなかった。ベッドに胡座を掻いた。瓶の蓋を開けた。ボトルのキャップも開けた。農薬を口に入れ、冷たい水を流し込んだ。手を胸の上で組み、そのまま仰向けになった。ゆっくりと目を閉じた。遠くから、悪魔の囁きが、聞こえてきた。    完
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