隙間

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隙間

隙間が怖い。 明るい内は良いのだけど、夜になると隙間の奥が暗闇で満たされる。そこから何かが自分を見ている様な気がして仕方ない。 もう大丈夫なんだ。あの体験が俺の中に根強い恐怖となって残り続けている、それだけの筈なんだ。 あの頃の俺は、地元の会社で内定を貰い就職活動も早々に終わって、残りの大学生活を仲間と遊び歩いて過ごしていた。 百合に出会ったのはそんな時だ。名前の通り、香り立つ百合の花の様な女だった。 俺も仲間も、すぐに百合に夢中になった。彼女に気に入られたくて、競い合う様に仲良くなった。 百合は俺と付き合う事になった。誰より先に告白したのが俺だったという単純な理由だ。 百合と付き合い始めてしばらくは、有頂天だった。周りからの羨望の眼差しが心地好く、優越感に浸っていた。 そういった時の周りからの忠告というのは、どうしてああも届かないのだろうか。
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