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お供えアイス
祖母が祖父の仏前に供えると、カップ入りのアイスクリームを買ってきた。
祖父はバニラアイスがとても好きだったから、喜ぶだろうとその時は思ったけれど、何しろ品が品だからあまり長く供えていたら溶けてしまう。
そう思うのに、祖母は仏壇からアイスを下げようとしない。
きっと、供養のために溶けるまで供えるのだろう。そう思いはしたが、やはりアイスが無駄に溶けてしまうのを放置してはおけない。
だから祖母が部屋を離れた隙に、私はアイスを冷凍庫に入れようと手を伸ばした。
手にしたカップはやけに軽く、溶けかけなら当然感じる冷たさがまるでなかった。
不思議に思い、中を見ると、カップの中にアイスはなかった。
祖母が中身を取り出して、カップだけを供えたのだろうか。でも、買い物から戻るとすぐ、祖母はアイスを仏壇に供えたからそんな暇はなかった。
もしかして、途中で食べた? いや、わざわざ空いた容器を供えるなんて罰当たりな真似を祖母がする筈がない。
いったい何がどうなっているのか判らず、首を傾げながらふと見た祖父の遺影。その唇にうっすらと白い物が付着しているのが見て取れて、私はアイスクリームのカップが空だった理由を悟った。
おじいちゃん。アイス、美味しかった? 今度は私も買って来てお供えするね。
お供えアイス…完
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