第三章 スキャンダルの連鎖

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 ここからは仕事だ! 「うん。昼間の川原との会話で分かったと思うけど、清水のPCにあった写真に写ってた男はほとんどが清水の同期で、顔がはっきりわかっている人間は監査で取り調べが始まってる。その取り調べの中で川原の名前も挙がったし、川原が私と真について調べてるようだったから、私が揺さぶりをかけたの。あの会話で川原が清水の共犯で、自分の証拠だけを上手く消してたことははっきりしたんだけど、川原の身辺を調査して不透明な金が動いてることがわかって、その金の流れも調査することになったの」 「それは侑も知ってることか?」 「え?」 「いや、侑にも黙って藤川課長と何かしてただろう?」  蒼が、私と真が侑に隠れて仕事をしていたことを知っていたことに驚いた。 「ああ……、うん。ここまでは侑も関わってた。で、ここからが侑も知らないことだから、詳しくは侑が来てから話すけど、その前に蒼に知っておいて欲しいことがあるの」  蒼は大事なことを聞き洩らすまいと、黙って聞いた。 「清水が同期たちを使って女を脅すネタを作っていたのは、金だけでなく仕事を取るためでもあったの。入札事業の情報を得たり、その担当者を丸め込むための工作として、女たちを使っていたらしくて、性接待をさせていた疑いもある」 「とことん下衆野郎だな」 「同感ね。ただ、ここまでわかって、一つ疑問が生まれた」 「清水レベルで手に負えることじゃない……」  私の言おうとしたことを、蒼が言った。私は頷く。 「では、清水のしたことで利益を得るのは誰か――。昼間の川原への揺さぶりは、それを知るためでもあったの」 「なるほどな……」 「侑には、私が接触した以降の川原がどう動くかを見張らせてたの。焦った川原が連絡を取る相手が黒幕だろうから」 「見当はついてたのか?」 「うん。でも、実際に川原が連絡を取った人間は別にいた」 「それで、さっきの電話か?」 「うん……」と言って、私は言葉を止めた。
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