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午後六時。
私と蒼は居酒屋にいた。春田さんと満井くんと会うために。
私のバッグの中には、婚姻届が入っていた。後は私が記入するだけ。
『これは咲が持ってて。いつ出すかは、咲に任せるよ』
おじさまが証人欄に記入を済ませると、蒼は言った。
私は黙って、それを受け取った。たかが紙切れ一枚なのに、鉛のような重み。
これは、罰だ――。
これまで、散々蒼を試して、焦らしてきたことへの罰。
私の覚悟を試されてる――――。
「成瀬さん!」
呼ばれて振り返ると、春田さんと満井くんが店の入り口に立っていた。
「春田さん、満井くん」
春田さんは薄いピンクのワンピースで、満井くんはTシャツにジャケットとジーンズ姿で、社内での印象とは違って見えた。
若いな……。
「私服だと、二人とも若いな……」と、蒼が呟いた。
「ふふ……」
「なんだよ?」
「二人とも、昨日はお疲れ様」
私は春田さんと満井くんに言った。
「いえ、成瀬さんと課長の方が……」と言いかけて、春田さんがハッとして手で口を押えた。
「すみません。もう……課長じゃないですよね」
「気にしないで。蒼、でいいよ?」
春田さんは少し恥ずかしそうに笑った。
可愛いなぁ……。
「今の……庶務課はどう?」
乾杯をして、私と蒼が辞めた後のホールディングス総務部の様子を聞いた。
一時は混乱もあったけれど、課を越えて協力し合い、今ではすっかり平穏を取り戻したようだ。
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