第十章 本能のままに

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「で、俺はいつから騙されてたわけ?」  セックスの後、シャワーを浴びてからルームサービスを頼んだ。 「騙すなんて……」 「最初から兄さんたちが会長職に興味ないことを知っていて、俺を焚きつけたんだろ」 「和泉さんは蒼をスタートラインに立たせたかったのよ」と、私は蒼が会長の後任に決まるまでを話し始めた。 「三男だからって、蒼は最初から会長の後継者になることなんて考えてもいなかったでしょう? とにかく、蒼の意識を変えるために、和泉さんは情報屋の話をしたの。蒼が本社に異動になって、心配した充さんが和泉さんと電話で話して、その時に会長の後任には蒼が適任だと意見が一致したらしいわ。和泉さんは百合さんと結託して私に清水の情報を流し、私と蒼を出会わせた。後は、蒼も知っての通りよ」 「咲はいつから兄さんたちの企みを知ってたんだ?」 「和泉さんが川原と接触したと聞いて、気がついたの。和泉さんは自分と充さんをスケープゴートにして、蒼に事件を暴かせようとしてるって。そして、それを次期会長への足掛かりにさせようとしてることも」  私がシャンパンに口をつけると、蒼がチーズを私の口に押し込んだ。 「なんですぐに俺に言わなかった?」 「私も蒼の本音が知りたかったから?」と言って、私も蒼の口にチーズを押し込んだ。
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