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「蒼に次期会長を狙う意思がなければ、話は変わってたのよ。いくら適任でも、ヤル気のない人間に務まるほど簡単な職務じゃない。けど、きっかけはどうであれ、蒼は会長職に意欲を見せた」
「なんっか、納得いかないんだよな……。結局、俺は流されただけのような気がするんだけど?」と、蒼は髪をクシャッとかき上げた。
「それも大切なことよ? 和泉さんは自分が根っからの自信家で、ギャンブラーなことを認めてた。しかも、新しいもの好きで頑固。だから、自分には会長の椅子は相応しくないと、ずっと思ってたそうよ。充さんは見た目に似合わず、情に脆くて、柔軟性に欠けている。新しいことや物を取り入れることに消極的な上に、和泉さん同様に頑固」
「確かに……」と、蒼は苦笑いをした。
「蒼は三男て立場のお陰か、常に肩の力が抜けていて、他人の言葉を自分の糧にして成長できる。それでいて、自分の意見をしっかり持っていて、主張できる。だからと言って頑なになり過ぎず、引き際を心得ている。遊び心と堅実さを兼ね備えている人間は、そうはいないわ」
「真顔で言われると……リアクションに困るな……」
蒼は照れ臭そうに、顔を背ける。
「俺が会長の椅子に興味を示さなかったら、どうするつもりだったんだ?」
「その時は、真を次期会長に据えるつもりだった……」
「俺や真さんより、咲の方がよっぽど会長に相応しいって思うけど?」
「私は……。私には相応しくないよ……」
だって、私は犯罪者だから――――。
私は言葉を飲み込んだ。
蒼が私の頬に優しく触れて、そっと引き寄せた。蒼のキスが優しくて、嬉しくて、胸が締め付けられた。
結局、この腕の中に戻ってきてしまった……。
「そうだ! 明日の夜、春田さんと満井くんと飲みに行かないか?」
「え……?」
「パーティーや今日の会議で世話になったしさ。春田さんが俺と咲のこと心配してくれてたし」
「いいけど……」
早速、満井くんに電話をする蒼が、何だかやけに楽しそうで、私も嬉しくなった。
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