第十章 本能のままに

4/10
前へ
/369ページ
次へ
 昼近くまで、何度抱かれたかわからなかった。  セックスをして眠って、目が覚めると蒼はまた私を求めた。 「もう、二度と離さない……」  明け方、蒼がポツリと言った。私は、声を殺して泣いた。  あの日、蒼と別れた部屋。  あの日が、蒼を離してあげられる最後のチャンスだった。  T&Nの頂点に立とうとする蒼に、私は相応しくないとわかっている。それでも、もう私には蒼を諦められる気がしない。 「もう、二度と離れない……」  私は蒼の腕の中で、目を閉じた。 「大丈夫か?」  ようやく起き上がろうとして、私はベッドから滑り落ちた。 「大丈夫……じゃない……」  全身が痛い。特に腰の鈍い痛みが体の自由を奪った。 「あーーー……、ごめんな?」と、蒼が気まずそうに言った。 「もう……しばらくしない」 「えっっっ? マジ?」 「マジ!」  蒼のあまりの落ち込みように、私は思わず声を出して笑ってしまった。 「あはははは……! 落ち込み過ぎでしょ!」 「おまっ――! 笑いすぎだろ!」 「だって……」  蒼は私を抱きかかえると、バスルームに連れて行ってくれた。湯船に浸かって身体を温めると、腰の痛みが少し和らいだ。
/369ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5842人が本棚に入れています
本棚に追加