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お風呂から出ると、蒼が電話を終えたところだった。
「咲、父さんが昼飯を一緒に食おうって。咲のお父さんも一緒に」
「ん……。着替えに帰る時間ある?」
「ああ」
私と蒼は同じタクシーに乗った。私のマンションに着くまで、蒼は私の手を握って離さなかった。
『用事を済ませてから行くから』と蒼からメッセージが届いて、私は一人でお店に行った。
以前、おじさまと充さんと来た料亭。
「咲、一人か?」
案内された部屋には、おじさまとお父さんの他に、和泉さんと充さん、真がいた。
「蒼は?」
「用事を済ませて来るそうです」
私はお父さんと真の間に座った。お父さんは今日、一度札幌に帰ることになっている。
「咲、蒼にはネタばらししたのか?」と、充さんが聞いた。
「しましたよ」
「蒼、怒ってた?」と、和泉さん。
「それほどでもないと思います」
部屋の襖が開いて、蒼が顔を出した。
「兄さんたちも来てたの?」
蒼は和泉さんと充さんの間に座った。すぐに、ビールと料理が運ばれてきた。
「蒼の会長後任決定を祝して、乾杯」
音頭を取ったのは、和泉さんだった。
和泉さんと充さんはいつになくご機嫌で、やけに蒼に絡んでいた。
「やっぱり……騙されたとしか思えないんだけど……」
蒼が和泉さんに言った。
「人聞き悪いね?」
「昨日から言ってますよ」
「俺が咲を告発でもしてたらどうしてたんだよ?」
「それはないな」と言いながら、充さんが二杯目のビールを手酌した。
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