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「そうだね。蒼が咲ちゃんを気に入るのはわかってたよ」と、和泉さん。
「なんたって初恋の女だからな」
蒼がゴホッゴホッとむせた。
私もつられて、咳込む。
「なんっの……」
「残念ながら、咲ちゃんの初恋は蒼じゃないけどね」と、和泉さん。
「こんなにいい女になるなら、あの時からもっと優しくしとけばよかたなぁ」と、充さん。
「充、それ犯罪だから」
「く――――っ! ふふ……」
和泉さんと充さんの会話に、私は笑いを堪えきれなかった。
「あははははは……!」
真とお父さんも笑いだす。
「咲! 笑い過ぎだから!」
「悪いな、蒼。咲の初恋貰っちまって」
「それはもうっ、いいから! 俺は最後でいいんだよ!」
蒼はジャケットから取り出した紙を、テーブルに叩きつけた。みんなでそれを覗き込む。
え……、これ――――。
「証人の欄、父さんと成瀬さんに書いてもらおうと思って、取って来た」
婚姻届。
「俺の欄は書いてあるから」
蒼が、正面から真っ直ぐ、私を見た。
そして、視線を逸らす。
「成瀬さん、咲と結婚させてください!」
部屋の中が、静まり返る。
和泉さんも充さんも驚いたようで、目を丸くして固まっていた。真も。
ちょっと……待って…………。
「なんで……」
私は呟いた。
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