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「仕事にとりかかる前に、課長に自己紹介だけしておきましょう」
庶務課の全員がデスクに戻ったところで、年長者である斉川さんが立ち上がり、声をかけた。
「まず、僕から。斉川です。庶務課歴二十年になりますので、わからないことは何でも聞いてください」
斉川さんが課長に一礼し着席すると、隣の満井くんが立ち上がった。
「満井です。庶務課は五年目になります。高所作業や力仕事は僕の担当です」
満井くんは高校・大学とラグビー部に所属していて、とにかく立派な体つきをしている。百八十センチを超える長身で、庶務課にはなくてはならない男手だ。
「春田です。庶務課は二年目で、まだまだ勉強中です」
春田さんは大人しくて人見知りをするので、主に事務をしてもらっているが、とても真面目で仕事熱心な子。何度か一緒にランチをしたが、自分のことを話すのは苦手なようだ。春田さんと満井さんが付き合っていることに気付いているのは私だけだろう。
「遠山です。庶務課は七年になります。主にデスクワークをしています」
遠山さんは元は営業部のバリバリのキャリアウーマンだった。結婚・出産・離婚を経て、勤務時間の融通が利く庶務課に異動してきたらしい。
「香山詩織です。庶務課は二年目です。課長の歓迎会は任せてくださいね」
詩織ちゃん、張り切りすぎ……。
私は詩織ちゃんの着席と同時に起立した。
「成瀬です。庶務課は三年目です」
私は最低限の挨拶をし、課長にお辞儀をした。私が着席すると、課長が起立した。
「築島です。ご存知の通りグループ会長の三男です。まだまだ若輩者ですが、皆さんよろしくお願いします」
庶務課全員が起立し、『よろしくお願いします』と一礼して、着席した。
斉川さんはすぐさま分厚いファイルを片手に課長のデスクに向かう。前任の課長から直接引継ぎが出来なかったから、斉川さんから説明があるのだろう。
私の隣で、詩織ちゃんが楽しそうにパソコンのディスプレイを眺めている。今日は歓迎会のセッティングで一日を終えそうだ。
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