第三章 スキャンダルの連鎖

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 これを言ってしまったら、蒼は私をどう思うだろう。  私たちは、どうなってしまうだろう……。 『あいつはそんなにヤワじゃないと思うぞ』  電話での真の言葉を思い出す。  信じよう、蒼を――。 「私たちが黒幕だと睨んでいたのは築島(みつる)副社長なの」 「兄さん――?」  蒼の表情が強張った。  築島充は蒼の兄で、二男。今はT&Nグループのひとつ、T&N観光の副社長をしている。伯父である社長の引退が近く、年内に社長に就任することになっている。 「うん。そして、実際に川原が今日の夜会っていたのは、築島和泉(いずみ)社長だった」 「嘘だろ……」  築島和泉は長男で、T&Nフィナンシャルの社長だ。 「ちょっと待て。和泉と充がつるんでるなんてあり得ない」  蒼が動揺を隠して、言った。 「和泉社長と充副社長の仲が良くないのはわかってる。だから、私も川原が接触したのが和泉社長だと聞いて、驚いた」 「そもそも、川原と充兄さんが繋がってると疑った根拠は?」 「新条百合(しんじょうゆり)」 「しんじょうゆり?」  蒼が彼女の存在を知っているのかはわからなかったが、どうやら初めて聞く名前のようだった。 「情報システム部部長で私の上司」 「その女が情報源?」 「そう。私に築島充副社長を調べるように指示してきたの」 「新条百合が充兄さんを疑った根拠は?」 「百合さんは……築島和泉社長の元恋人」 「和泉兄さんの――?」 「そして、百合さんの今の恋人は、侑」 「はっ……?」  さすがに驚きを隠せず、蒼は言葉を失った。  侑、蒼に百合さんのことを話してなかったのか……。
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