真偽のハナシ。

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「なーんで、今の心霊写真や動画って作り物が多いんですかね?」  不意に、(たもと)が欠伸を噛み殺して言った。怪しい怪奇専門雑誌の編集者である添田(そえだ)と袂は二人、夏の心霊特集に向けて知り合いの映像制作会社で、それらしいものを漁っていた。  編集室で映像をチェックしていたが、添田が袂に目を走らせると、飽きたような表情で、腕を頭の後ろで組み背を反らしている。添田は、一瞬意味を取り損ね、拾い上げた後ある話を思い出した。 「昔さ、」 「はい」 「オカルトブームで引っ切り無しに番組やってただろ」 「九十年代とかっすか?」 「そう、それ。そんときにな、結構本物も出回ったり、マジでヤバい現場も在ったんだと」 「へぇー? それで?」 「呪われたり、放送事故も在ったらしい。有名なのだと、“絶対見てはならない、破滅の祭壇の写真”とかだな」 「ふーん? そうなんですか」 「呪われたヤツもいたり、もしかしたら、このことが原因でおかしくなったんじゃないかってヤツも大量にいた。バブル期前後だ。人は掃いて棄てる程いただろうから問題にもならなかった」 「ほーん? イマイチぴんと来ないっすね? で、だから何なんです?」 「……今、当時その最前線にいた人たちが、『上』にいる訳だ」 「はぁ……まぁ、それはそうでしょうね?」 「そう言うヤバい仕事を経験したら、自ずと暗黙の了解が出来るってモンだろ…… “本物は絶対流すな、本物の現場には行くな”  ……責任取りたくねぇからな」 「じゃあ、今偽物ばっかりなのって、その暗黙の了解ってことなんですか?」 「トラウマも在ったんじゃないか? ま、噂だけどな。俺も編集長に聞いただけで、詳しくは知らん」 「そうなんですか」 「ただ、」 「はい」 「たまにやっぱりある一定数本物が紛れ込むことが在るらしい。チェック洩れなのか、わざと新人が入れてるのか、誤ってなのか。何でかわからんがな」 「ふぅん……ねぇ、先輩」 「何だ」 「じゃあ、コレはどっちだと思います?」  
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