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百歩譲ってZENだと気付かれなかったとしても人目を引くのは避けられない出で立ちである。変装を履き違えてやしないか少し不安になってきた。
これでは肇の変装を眼鏡だけかとケチをつけた善信も人の事は言えないのではないかと思う。
「今日はそれでいいんだよ。お前を護るのが俺の役目だ」
あからさまな言葉に肇は少しうろたえてしまう。
「それはっ……嬉しいけど。俺と一緒にいたら確実にZENだってバレちゃうだろうね。真っ黒だしさ」
イメージカラーである以上、それはもう仕方のないことだ。諦めるしかない。
「例えバレてもこの格好なら話しかけてくる奴はいねえだろ。……あと、お前はちゃんとマスクしろ」
そんなの分かってると言い返そうとしたら、「唇が赤くなってる」と言われ絶句した。慌てて上着のポケットからマスクを出して顔半分を覆い隠す。顔まで火照ってきて居た堪れない。
善信にニヤリと笑われて、「誰のせいだよっ」と睨む。
「――それで? このこと谷さんは知ってるんだよね?」
「ああ。今日一日許可を貰ってる。夜には駆けつけてくれるそうだ」
「ならいいけど……。あと、さっき言ってた助っ人って何?」
「それは……そろそろ時間だ。あとは車で話す」
スケジュールが全て頭の中に入っているのか、腕時計を見てはジャケットを掴んだ善信がそう言った。
肇は呆気に取られながらも、彼に続いて応接室を後にした。
――第3章――
おわり。
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