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善信のマネージャーとしての働きは予想を上回っていた。
谷先でもあそこまではしないというようなことまで、善信は率先してやってくれたのだ。
(仕事が1件片付く度にマッサージとか。さすがにやり過ぎだよね……まあ、気持ち良かったから文句も出なかったけど)
加えて、触れ方がとことん優しいと来た。素人のマッサージなのだから労わるように優しく触れて当然なのかもしれないが、どこか壊れものを扱うような丁寧さもあったりしてつい微笑ましくなってしまったのだ。
「あっ、本当に来てくれたんだ……ハルトくん」
事務所の駐車場に止めた善信の車の中で、肇は外に目を凝らしては呟いた。
スラリと伸びた綺麗な身体のシルエットは、日の落ちた暗がりの中でも見惚れるほど美しい。
その影が車まで近付いて来たのを見て、肇は車のドアを開けた。
「いらっしゃい。今日は来てくれてありがとう。よっちゃんが無理言ったんじゃない?」
「いえ。こちらこそ声を掛けて頂いて、嬉しいです」
「……本当に?」
彼を車内に招くなり、運転席に座る善信を後ろから窺う。
「だから言っただろ。彼はやる気になってくれてるって。危ないことをさせるつもりはねえが、截拳道の腕前は本物だからな。俺が保証する」
善信の言葉を疑うつもりはないが、肇は再度尋ねずにはいられず隣に座るハルトを振り向く。
「本当にいいの? いくら送り届けるだけとはいっても、傍にいるのがZENじゃないって知ったらあの男が急に襲って来ないとも限らないんだよ?」
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