駆け上がってきた足音

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駆け上がってきた足音

 二階の一番左の部屋に干してある洗濯物を一番右の部屋に取り込む。    いつも私がしていることだ。     家で乾燥機を置けるのは一番右の部屋だけ。  少々面倒臭いが仕方ない。  一階に居る家族は誰も手伝ってくれないので、今日も一人で行ったり来たりを繰り返す。 「はぁ……誰か手伝ってくれてもいいのに」    私の独り言は誰の耳にも届かずに、虚しく消えた。  こうして、今日も家族全員分の洗濯物を全て取り込む。  終わった、と一息ついて、乾いたバスタオルを持って下に降りようとドアノブに手を掛けた。  その時だ。      ダダダダダダダダダダッ!!  バタンッ!! 「え?」  誰かが階段を駆け上がり、ドアを閉めた。  開いていないはずのドアを。   「誰……?」  ドア越しに問いかけるも、なんとなく“家族ではない”と直感する。  家の階段はかなり急で、走るとなると息切れしてしまう。    それなのに息切れもなく、足音だけが駆け上がってきた。  それに、ドアを閉めたはずの部屋からドアの閉まる音。  風もなく、ましてや廊下から押すタイプのドアなので、風で閉まることはあっても開くことはない。  サーっと血の気が引くのがわかった。  “誰かが手伝いに来てくれた”というのが嘘だと分かっていても信じたい。   部屋に確認しに行くのは怖かったので、私は急いでリビングのドアを開けた。  しかし、そこに居たのは私以外の家族。  妹はゲームに熱中していて、父は寝ている。母はまだ帰ってきていなかったので、アレが母だということもない。  じゃあ、さっき駆け上がってきたのは…?  思わず階段を振り返るが、そこには何も居なかった。  ちなみに、一年近くたった今も未だにこのとき駆け上がってきたモノの正体はわからない。  母も同じような体験をした事があると言っていたので、もしかしたら家に家族以外の何かが住んでいるのかもしれない……
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