ソドム

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ソドム

ぼくの住むこの国は、平和だ。   平和を絵に描いた様な静かな街と穏やかな人々。 何も危険な事は無い様に見える。   この国の首都であるココ東京にだって、これだけの人間がいるにも関わらず、争いに巻き込まれる事や遭遇する事は、他の大多数の国に比べれば極めて低い。   一見、平和。 平和を装ったそんな街。 ぼくはふと、巨大なスクランブル交差点の真上に燦然と輝く、電光掲示板に目をやった。 BC 2055 0506 西暦と日付。   そうだった。今日は祝日なんだ。 ぼくは、自分が今日は学校の制服ではない、ジーンズにパーカーの私服だった事を思い返した。 普段のぼくは、高校生だ。 毎日学校と自宅を往復するなんの変哲も無い、普遍的な生活を繰り返し繰り返し、時間通りにこなしている。 そんな日々を送るうち、曜日や日付なんてモノを明確に意識する事もなくなって来た。   今日は祝日。   ぼくはもう一度、心の中で呟いた。 それにしても、この街には人通りが少ない。 ぼくが今いる渋谷という街は、昔はカナリの繁華街で平日でも人でごった返し、土日や祝日にはそれこそ歩道で人が見えなくなるほど混んでいたと学校のテキストで読んだ。       
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