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それで性犯罪も減っているのだから政府も[ハイパー・ドラッガー]にもう少し慣用になればいいと思う。
けれど、ぼくが欲しいのはそれでは無い。
「はぁ~、あんなんの何が良いんだかね、アッチの男が確か持ってたよ」
金髪の男が親指で、ビルとビルの間の影に紛れ込む様に立っている初老の男を指して言った。
ぼくが、軽く会釈しながら礼を言うと、
「そっちに飽きたら、コッチも試してみな~」
金髪がぼくの背中に、そう声をかけた。
見上げれば曇天の空が、終わりなく広がっている。
灰色のコンクリートの道と同じ色をした無機質なビル群、大分老朽化しているその建物たちはいまにも崩れてきそうで不安を煽った。
そんなグレーの世界で、妙に色鮮やかな旧式の自動販売機だけが明滅している。
しゃがみこむ男は、そこだけがまるで別次元のように影を作っていて ぼくは、戸惑いながらもその男に声をかけてみた。
「あの……ソドムは……ありますか?」
まるで影と同化しているかの様な全身黒ずくめの初老の男は、ぼくをチラリと一瞥し、
「返品は出来ない」
そして、耳障りなしゃがれ声でぼくを見定めながら呟いた。
「……いくらなんですか?」
相場がわからなかったので、地道にこずかいやら昼飯代を貯めていたのを念のため全額リアルマネーで持って来た。
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