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違法な商品なので電子マネーが使えるとは思えなかったからだ。しかし、それで足りるかどうかはわからない。
「返品は受け付け無い、何かあっても自己責任だ」
質問の答えはちぐはぐで、ぼくはただ頷くだけ頷いた。
「あの、ぼく、あまりお金を持って無いんですが……」
全額といっても、学生の貯金なんてたかがしれている。
バカ高い値段をふっかけられる可能性も考慮して、ぼくは男に予防線を張っておいた。
「返品は出来ない。自己責任だ」
また、同じ答え。
金額についての話は、やはりなかなか出て来ない。
「わかりました。それで──」
ぼくがそう言いかけた時、男の手が僕の右頬へスーっと伸びて来た。
体が一瞬硬直し、思わず目を瞑る。
そして──
次に目を開いた時、目の前は暗転していた。
「えっ? ……? なんだよ? コレ……」
ぼくの目の前から、突然男の姿が忽然と消え失せた。
いや、それどころか、さっきまでいたはずの狭い路地裏や廃ビルや自動販売機、そんなものがたちどころにして目の前から何もかも全て消失し、今のぼくには、ただ暗闇だけが目の前にある。
「ココ……どこだよ?」
全くワケがわからない。
ただ、不安に押し潰されそうになっていたぼくの目の前に、突如また青白い光が点る。
よくよく見れば、それは発光する球体で、恐る恐る手で触れてみた。
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