キツネの嫁入り

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「お、おい」 「あ?」 ・・・な、なんだ? 雨・・・か? 「なんかあのバケモン、こっち見てね?」 「バケモン?どっかの犬じゃねぇの?」 「いや、こっち近づいてきてるって」 ばけ・・・もん? 「うわ、雨凄くなってきた」 「もう帰ろうぜ。こいつどうでもよくね?」 「・・・そうだな」 男たちの野蛮な足音が遠ざかって行って、 かわりに雨の音が激しくなっていく。 つーか、なんだよこの雨。 身体・・・冷たいって。 「・・・・・・ぁ?」 視界の中に白いもんが入ってくる。 犬みたいな、ふさふさした毛並みの、 結構大きめの獣・・・、 つーか、その耳・・・。 そいつは俺の前で止まって、 顔を近づけてくる。 なんか頭がおかしくなったのか、 この獣が・・・あいつのような気がする。 あいつが俺のこと助けに来たんじゃないかって、 アホなこと考えてる。 勇雅ならともかく、 酷いこと言った俺なんて助けるわけねぇのに。 「・・・・・・遅ぇよ、紺」 いろいろ悪態つこうと思ったけど、 そんな余裕なんて全然ない。 目の前が暗くなっていって、 意識が遠のいていった。
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