キツネの嫁入り

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昼ごろにリビングへ行くと、 もちろん、親父も勇雅もいなかった。 親父は仕事だし、 勇雅は学校。 俺は・・・こんな傷で学校なんて行けないだろ? そうじゃなくても行く気ないけど。 「・・・・・・」 この静かなリビングに、母さんがいた。 綺麗で優しくて、 怒ると怖いけど、いつも俺の味方だった。 俺と勇雅のこと、 愛情持って育ててくれた。 「あ、遥人さま」 ・・・・・・、 「おはようございます。傷、痛みますか?」 ・・・うるさい。 「今、朝食の用意をしますので――」 「うるっせぇ!」 怒鳴りつけると、そいつがビクッと震える。 時間差で耳としっぽが生えた。 こんな、こんな化けもんが、 ここにいていいわけないんだ。 「なんでお前がここにいるんだよ!」 「・・・・・・よう、と、さま」 「ここは母さんの居場所だ!  お前のような化けもんがいていい場所じゃねぇんだよ!」 ほら、傷つけ。 もっともっと傷つけ。 そしてこの家から、出ていけ。 「何が子ギツネだ、何が恩返しだ!  そんなの、実際にあるわけねぇだろ!」 肩を強く掴むと、怯えた目で俺を見る。 こんな、 こんな耳なんて・・・っ、 「・・・遥人、さま」 「・・・・・・」 「申し、わけ・・・あ、ありません」 ――っ!     
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