キツネの嫁入り

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力を入れて、肩を掴む。 壊れるんじゃないかってくらい、強く。 「・・・っ」 すげぇ痛いくせに、顔しかめてるくせに、 やめろって言わない。 俺のこと、全然拒否しない。 それどころかこいつ、 震える手で、俺の頬を触りやがった。 「・・・なんだよ、今の」 「・・・・・・涙が」 涙? 「はぁ?また嘘つきやがって!  俺が泣くわけねぇだ・・・ろ」 今、明らかに 目から何かが落ちた。 いやいやありえねぇって。 「う、嘘だ、だって俺、泣くわけ・・・ねぇし」 「・・・・・・遥人さま」 「母さんの葬式だって、俺、泣かなかったし。  親父と勇雅は泣いてたけど、俺は・・・」 ――っ? 息が、止まった。 「・・・遥人さま、申し訳ありません」 な・・・んで? なんで、こいつの胸・・・、 こんなにあったかいんだよ。 「勝手にこんな・・・、本当に、申し訳ありません」 「・・・・・・な」 「い、嫌でしたらすぐに離れ」 「謝るなって、バカ!」 背中に腕を回すと、大きなしっぽにくすぐられる。 なんかすげぇ悔しいから、 こいつの胸、涙でたくさん汚してやった。
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