キツネの嫁入り

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あいつがこの家に来てから、だいたい1カ月くらい経った。 あいつは家事を全部引き受けて、 しかもちゃんとこなしている。 江本家が戻りつつあるんだ。 母さんのいたころの江本家が。 あいつは耳としっぽさえ出さなければ、 人間と何ら変わりはない。 このまま家族でいさせるというのも、 いいのかもしれない。 ・・・喉渇いたな。 キッチン行ってなんか飲んでくるか。 この時間だとみんな寝ているだろうから、 静かに階段を下りる。 ところが、 「あれ?」 リビングにほんのり明りが灯ってる。 なんだ、誰か起きてるんじゃん。 「まだ起きてたのか、遥人」 親父と・・・紺だ。 紺の方は俺を見て会釈した。 ん? 紺のやつ、ちょっと顔赤くないか? ・・・なるほど、そういうことか。 「こっちが言いたいし。つーか、酒飲んでんのかよ」 「ウイスキーだ」 「酒だろ。そしてこいつ、酒飲めるのかよ」 「飲めなくはないぞ。たまにこうしてつきあってもらっているからな」 親父が紺にグラスを差し出すと、 紺が受け取る。 そして慣れた手つきで水割りを作る。 ・・・なんだよ、 こういうこともするのかよ、こいつ。 これも、母さんの代わり、なのかよ。 「どうぞ、お父様」 「ありがとう、紺くん」     
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