キツネの嫁入り

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えーっと、 今、思い出すから。 こいつのこと、 ちょっと色っぽいかもしれないって思って、 で、気付いたら、 ・・・・・・キス、してた? 「あ、あ・・・、っと」 「・・・・・・」 あ、耳出た。 しっぽも。 「み、耳!」 「も・・・申し訳ありま」 「しっぽしっぽ!」 「は、はい!」 耳を押さえようとしたらしっぽがでて、 しっぽを押さえようとしたら耳が出て、 ・・・何コントっぽいことしてんだ?こいつ。 あ、足音が聞こえる。 親父が戻ってきやがった。 「引っ込むまで洗面・・・はダメか、キッチンの影に隠れろ!」 「は・・・はい」 慌てて紺がキッチンに戻る。 しっぽの先が見えなくなるのと同時に親父が戻ってきた。 間一髪だ。 「ん?紺くんはどうした?」 「親父が飲ませるから気分悪いって戻った」 「そうなのか?どれ、様子を見てこようか」 「いいいい!あいつなら大丈夫だ!」 「でも」 「いいから早く飲んで寝ろよ!俺が見てくるから」 親父はきっと気付いてる。 あいつが人間じゃないって。 だって母さんが言ってた子ギツネじゃないかって 疑ってるくらいだから。 でも、 耳やしっぽが生えているあいつはともかく、 顔を真っ赤にして動揺してる今のあいつを見せるのは、 絶対に嫌だ。     
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