キツネの嫁入り

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今のあいつを見ていいのは、 あいつをあんな風にした俺だけだ。 キッチンに行くと、 流し台の下で蹲っているのが見えた。 つーか、その状態でもしっぽ丸見えなんだけど。 後ろから近づくと、俺の気配に気づいたのか 耳としっぽがビクンって跳ねる。 「ぁ・・・」 口をふさいで「声出すなよ」的な合図をすると、 紺が困りながらも頷いた。 そのまま腕を引っ張って、俺の部屋まで連れてくる。 誰にも見つからないように。 ちょっと待てって。 俺、何してるんだ? こいつにキスして耳としっぽ出させて、 部屋に連れ込むはめになって。 だって、こいつが酒とか飲んでるから。 俺と同じくらいの見た目しておいて、 酒飲んだり酌したりしてるから。 で、やけに色っぽくなってるから。 化けもんなのに。 男なのに。 部屋に紺を置いて、また出ようとすると、 不安そうな目で見つめられた。 「なんだよ。親父に言ってくるだけだ」 「・・・・・・え?」 「お前を俺の部屋で寝せるって」 だから、すぐ赤くなるなって。 動揺するなって。 俺だってどうしていいかわからなくなるだろ。
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