キツネの嫁入り

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それから紺は、 俺と一緒の部屋で寝るようになった。 その方が俺も安心だし、 紺も本当の姿になれるからいいと思った。 でも、数日後の夜中、目が覚めると 寝てるはずの白狐がいなかった。 トイレか? そう思って階段を下りると、 リビングの照明が付いているのに気付いた。 覗くと探していたやつが姿を現す。 「お前、何してんの?」 「あ・・・遥人さま」 その手にはアイロン。 アイロン台には親父のものと思われるシャツ。 夜なべじゃん。 「申し訳ありません。アイロンをかけるのを忘れていて」 「親父のか?別にいいだろ」 「でも、明日お召しになると大変ですので」 ・・・なんだよ、それ。 親父に皺だらけのシャツは着せられないってか? 忘れてたからって夜中に起きてやるなんて、 親父の本当の嫁みたいじゃん。 「・・・ムカツク」 「え・・・?」 「いいから、とっとと終わらせて部屋に来い!」 紺がビビったのがわかったけど、 構わずに部屋に戻る。 だって・・・どこまで親父に尽くすんだよ、あいつ。 そりゃ、親父の金で生活できてるから 親父の言うこと聞くのはわかるけど。 じゃあ、親父がヤバいお願いしたら、 たとえば・・・ヤらせろとか言ったら、 受け入れたりするのか?     
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