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悪徳と悦楽の街、巴日倫市(バビロンシティ)。
深夜の海水浴から2ヶ月後、俺はフレイアを追ってこの街に辿り着いた。
街は高い壁と堀で円を描くように囲まれており、出入り口は東西南北に四カ所だけで、強固な門扉によって常に閉ざされている。
街の周囲は墓地で囲まれており、その異様な雰囲気は良識ある一般人を近寄らせない。
面積は約半径5キロ、その中に多様な人種が10,000人程がひしめき合って住んでいる。
人口の九割が罪人。
ギャング、マフィア、殺し屋、泥棒、詐欺師、サイコパス、カルト教団、売春婦、浮浪者、悪徳政治家、腐敗警察、正義が惨めになる街。表裏の社会から弾かれた者が最後に流れ着く場所。
どんな人間でも受け入れるが、生きた身体では出られない。
他国の干渉を受けず、否、他国が見て見ぬ振りをし、暴力が支配する街。
そして、この俺が産み落とされた街、巴日倫市。
この街を眺めるのは何年ぶりだろう。
新しい傷は完治したが、古傷が疼く。
「まさか、再びこの街に足を向けることになるとは。」
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